【医師監修】「午前中だけだるい不登校」はサボりじゃない!起立性調節障害(OD)の症状・検査・家庭での対策
この記事の執筆者・監修者
執筆:峰嶋 聡子
コクーンアカデミア代表 / 不登校の娘を持つ母 / 学習塾指導15年
監修:山口里恵氏
小児科専門医 / Health&Cureクリニック赤坂 院長

はじめに:起立性調節障害(OD)による不登校〜我が家の事例〜
学校に行きづらくなっているお子さんは、まずは体調不良を訴えることから始まります。「頭が痛い」「お腹が痛い」「吐き気がする」「めまいがする」「だるい」など・・・。
我が家の場合も、これらの症状のうちどれか1つか2つを毎朝訴えるようになることで不登校が始まりました。初めのうちは悪い病気ではないかと心配し、様々な病院にかかりましたが、どの病院でも検査の結果、最後は「ストレスによる自律神経の乱れ」と言われ、気休めのような薬を処方されて終わるというパターンを繰り返しました。
外に出ない→お腹が空かない→食べない→栄養不足→体調が悪い→外に出ない
という負のループを延々と続けるような生活に陥り、学校どころか、日常の外出もままならない状況になってしまいました。
しかし、そんな娘もその後の紆余曲折を経て、通信制高校に通うようになり、気持ちが前向きになってきたことをきっかけに「もっと元気になりたい」という気持ちが湧いてきた様子です。
そこで、お世話になったのが、全国的にも珍しい「起立性調節障害」を得意とするHealth&Cureクリニック赤坂というクリニックでした。
実はこれまで娘は起立性調節障害なのではないか?という疑いを持っていたのですが、血液検査や血圧の検査では基準値をクリアしており、正式に診断を受けたことはありませんでした。
今回、こちらのクリニックで初めて正式に「起立性調節障害」の診断を受けることができました。原因不明だと思っていた体調不良に「病名」がつくことで、これまでの欠席はサボりではなかったと証明されたような気がして、親子ともに前向きに治療に取り組むことができました。
さて、今日は、この「サボりと間違えられやすい」「治りにくい」というイメージのある「起立性調節障害」について、Health&Cureクリニック赤坂の山口院長にお話しを伺ってみました。
起立性調節障害(OD)とは?よくある症状とセルフチェックリスト
山口院長:起立性調節障害(OD)は、自律神経の働きがうまくいかなくなることで、血流や血圧のコントロールができなくなる病気です。思春期のお子さんに多く、小学生の約5%、中学生の約10%に見られます。
起立性調節障害の代表的な症状
代表的な症状としては以下のようなものがあります。
朝起きるのがつらい、午前中は体が重くて動けない
立ち上がったときにめまいや立ちくらみがする
頭痛、腹痛、倦怠感(だるさ)、動悸や息切れが起きやすい
午後や夕方以降になると徐々に体調が回復し元気になり、夜なかなか眠れない
感情の起伏が激しくなったり、集中力が低下したりする
特徴的なのは「午前中に体調が非常に悪く、午後~夜になると元気になる」点です。そのため、周囲から「ただのサボり」「怠け」「夜更かしのせい」と誤解されてしまいやすく、不登校の大きな原因の一つとなっています。
【セルフチェック】ご家庭でできる簡易診断目安
以下のチェック項目のうち、3つ以上当てはまる場合、あるいは2つでも強い症状がある場合は、起立性調節障害の可能性が考えられます。

□朝なかなか起きられず、午前中は体がだるそうにしている
□立ち上がったときに「クラッ」とする(めまい・立ちくらみがある)
□長時間立っていると気分が悪くなり、顔色が青白くなる
□少し動いただけで動悸や息切れがする
□頭痛や腹痛を繰り返し訴える
□午前中は元気が無いが、午後や夜になると元気になる
□乗り物酔いをしやすい
起立性調節障害はどのように診断される?クリニックでの主な検査方法
山口院長:当院の場合の紹介となりますが、患者様や保護者の方への丁寧な「問診」をベースに、客観的なデータを得るための検査を組み合わせて診断を行います。
問診と症状・生活状況の確認 発言や体調の変化、発症の時期、日常生活や学校生活での困りごとを詳しく伺います。小児心身医学会のガイドラインに基づき、症状の重症度(軽症・中等症・重症)も評価します。
新起立テスト(起立試験)当院では、新起立テストは診療方針への影響が無いため行っておりませんが、一般的な例を紹介します。横になった状態と、立ち上がった後の「血圧」や「心拍数」の変化を測定します。立ち上がった際に血圧が大きく下がったり、心拍数が急激に上がったりしないかを確認し、自律神経の働きやタイプの分類を行います。
血液検査(栄養状態やホルモンの確認) 体内の鉄分(フェリチン値など)、タンパク質、ビタミンなどの栄養バランスや、ホルモン状態を確認します。特に「隠れ貧血」や栄養不足が症状を悪化させているケースが多いため、当院では非常に重要視しています。
他疾患の除外診断 貧血、甲状腺疾患、心疾患など、似た症状を引き起こす他の病気がないかも慎重に確認します。
朝起きられない子どものために家庭でできる4つの対策・改善法
山口院長:ご家庭で取り組める対策として、生活習慣の工夫と「食生活(栄養)」の見直しがとても効果的です。
1. 栄養バランスの見直し(特にタンパク質と鉄分)
思春期は体の急激な成長に栄養の補給が追いつかず、重度のタンパク質不足や鉄分不足に陥りやすい時期です。これらが不足すると自律神経の調整機能が低下してしまいます。
タンパク質を意識した食事:肉・魚・卵・豆腐などを毎食しっかり取り入れましょう。食事だけで不足する場合は、プロテインを上手に活用するのもおすすめです。
お母さんだけが頑張らない:お母様一人で献立に悩むと大きな負担になります。「家族みんなで少しずつ食事を変える」という姿勢が大切です。
2. 起き上がり方・立ち上がり方の工夫
朝、ベッドから急に立ち上がると脳への血流が下がってめまいを起こします。
布団の中で手足を動かしてから、ゆっくり時間をかけて体を起こすように声をかけてあげてください。
3. 水分と質の良い塩分の補給
血流量を維持するため、意識してこまめに水分を取りましょう。また、塩分はかなり重要です。ミネラルが豊富に含まれる質の良い天日干しの塩から塩分をとるようにしましょう。
4. プレッシャーをかけない環境づくり
「明日は学校行ける?」などの問いかけは、お子さんにとって強いプレッシャーになります。午前中は体が動かない病気であることを理解し、焦らせず安心して休める環境を作ることが回復への第一歩です。
院長からのメッセージ:起立性調節障害で悩むお子さんと保護者の方へ
山口院長:毎日朝起きられず、学校に行けない我が子を前にして、「育て方が悪かったのだろうか」「このまま将来どうなってしまうのだろう」と、ご自分を責め、不安で押し潰されそうになっているお母様・お父様がたくさんいらっしゃいます。
まず知っていただきたいのは、起立性調節障害は決して本人の「心の弱さ」や保護者の「育て方」のせいではないということです。体の自律神経の機能や、栄養のアンバランスが原因で起こっている「体の病気」です。そして、適切なアプローチと理解によって必ず改善を目指せる病気です。
私自身、小児科医であると同時に一人の母親でもあります。保護者の方の焦りや葛藤も心から理解できます。
どうか一人で抱え込まず、まずはお近くの医療機関や専門のクリニックにご相談なさってください。もし遠方でお越しいただくのが難しい場合や、通院自体がお子さんの負担になる場合は、当院のオンライン診療(再診時)を活用していただくことも可能です。全国どこからでもご相談いただけますので、不安なときはいつでも頼ってくださいね。
お子さんが本来の笑顔を取り戻し、自分らしいペースで歩んでいけるよう、私たちはいつでもご家族の伴走者としてサポートいたします。
筆者 後日談:通院を始めて3か月、娘に起きた嬉しい変化

さて、最後に後日談です。
娘が通院を始めて3か月、2回目の血液検査を行いました。
血液検査の結果、フェリチン値という鉄の貯蔵状況を示す値がかなり改善していました。貧血の改善を示す数値でした。
ただ、血液検査の結果を見るまでもなく、親から見ても娘の様子は大きく変化していました。通院により先生や管理栄養士さんのアドバイスを本人が直接聞いて、食生活の改善の必要性を理解したのがとても大きかったと思います。
お昼前後だった起床時間が2時間ほど早くなり、ほとんど食べられなかった朝食も、時々食べるようになりました。
以前は、体調が悪い時は全く起き上がることができず、どんなに楽しみにしていた予定でも、どんなに大事な予定でも、「無理して頑張る」などということはありませんでした。
しかし、最近の娘は学校での大事な行事を休むことはありませんし、楽しみにしていた友達との約束も諦めません。多少予定を詰め込んでしまった週も「予定を入れすぎて後悔・・・」などと言いつつも、欲張って全部をこなしています。
また、体調が悪かった時期を経験しているため、それが逆に良い教訓になっていて「週に1日はゆっくり休む」というマイルールを設定し、無茶をすることはありません。
先生がおっしゃっていた「起立性調節障害は必ず良くなる」を実感しています。「本当に回復するのだろうか?」と不安になる病気ですが、ちゃんと良くなる事例として参考にしてもらえたら幸いです!
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監修者 峰嶋 聡子
コクーンアカデミア代表/株式会社スタディラボ上席執行役員/首都圏大手学習塾にて中学受験算数指導15年/一般財団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントコンサルタント®/不登校の娘を持つ母/学習塾のノウハウと不登校保護者の視点を組合わせたフリースクールを創業

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