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【なぜなぜ期】 先生は不登校の原因を知っているの? ~教師・生徒・保護者の回答を比較~

2025年9月26日

【なぜなぜ期】 先生は不登校の原因を知っているの? ~教師・生徒・保護者の回答を比較~

不登校の原因調査、最も信頼できる文部科学省の調査とは?

不登校に関する調査として、文部科学省がとりまとめている児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)は、全国の国公私立すべての小・中・高等学校を対象に行われる信頼度の高い調査です。(この結果は別の記事で詳しく紹介しています。)

それにも関わらず、不登校の原因第一位は「学校生活についてのやる気が出ない」とされており、「なぜやる気が出ないのか?」がわからない以上は対策の立てようもなく、「うーん・・・」と唸ってしまうような結果です。

しかも「やる気が出ない」という言葉に反応して、「やる気が出ないからと言って学校に行かなくて良いのか!」という世間の反発も生んでしまい、不登校親子を更に苦しめているように感じます。

そこで、もっと信頼度の高い調査があるので、今回はその内容をご紹介します。

「不登校の原因」よく見る調査に答えているのは誰?

他の記事※でも紹介しましたが、実は文部科学省が行っている不登校に関する調査(児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査)は「親や本人」ではなく、学校の先生や教育委員会が回答する形で行われています。不登校について家庭からどのような相談を受けたか?をもとに調査されたものなのですが、それが大々的に「不登校の原因」として報道されたりしていたのです。

当然ですが、不登校の生徒や保護者が学校の先生や教育委員会に伝えていない事はこの調査結果には反映されません。これでは実態がつかめないのではないか?と思ってしまいますよね。

※「不登校の原因調査」について紹介した記事
【解説】 2025年発表 不登校児童生徒数最新数値から見えたもの③ ~不登校原因は変わった??~ 

「不登校原因」に親や児童生徒が答えた調査はあるのか?

今日紹介する「不登校の要因分析に関する調査研究(令和6年3月発表)」という調査は、そんな疑念の余地のない調査です。


調査方法は以下の通りです。

平たく言うと、不登校の本人、親、先生、三者にアンケートをとり、言わば「答え合わせ」のようなことをするという調査方法です。これは・・・かなり本気の調査です。文部科学省の委託を受けて、公益社団法人 子どもの発達科学研究所浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターにより行われました。

不登校の「きっかけ・要因」を教師・生徒・保護者の三者で比較した結果

質問の1つに「(不登校の)きっかけ・要因」を25項目から選ぶというものがあります。(複数選択可)気になる項目ですね。この項目について、発表されたデータをもとに、グラフを作成してみました。

まずは、データの見方から紹介しましょう。

例えば一番上の項目の青い棒(教師の回答)赤い棒(生徒の回答)黄色い棒(保護者の回答)の数字はそれぞれ以下のようになっています。

いじめ被害 (教師 4.2%/生徒 26.2%/保護者 29.2%)

これは、不登校の生徒の26.2%はいじめ被害が「不登校のきっかけの1つ」だと回答しているが、先生側は4.2%しかこの項目を選んでいない、という見方をします。

100人の不登校生のうち26人がいじめがあったと言っているが、先生は4人しか知らなかった(もしくは不登校と関係が無いと判断した)ということになります。26人中22人つまり8割以上の生徒は、いじめられていることを先生に相談したり気づかれることもなかったと考えると、生徒が見ている世界と先生が見ている世界のギャップ・・・思った以上に大きいです。

学校生活に関することで教師⇔親子ギャップが大きかったものは?

25項目もあるので、グラフを大まかに「学校での状況」「生徒の状況」「家庭の状況」に分けました。まずは「学校での状況」を見てみます。

学校で起きていることなので、教師・生徒・保護者の回答のギャップが少ないものもいくつかあります。例えば
学業の不振(教師 41.2%/生徒 47.0%/保護者 35.9%)
宿題ができていない等(教師 40.5%/生徒 50.0%/保護者 37.7%)

などです。

学業不振はテストの結果を見ればわかりますし、宿題も提出状況を確認すればすぐにわかりますので、確かに、三者で共通の認識を持ちやすいでしょう。

ところが、学校で起こっていることにも関わらず、大きなギャップが出ている項目もあります。

いじめ被害 (教師 4.2%/生徒 26.2%/保護者 29.2%)
教職員への反抗・反発(教師 3.5%/生徒 35.9%/保護者 44.7%)
教職員とのトラブル、叱責等(教師 2.0%/生徒 16.7%/保護者 20.5%)

「いじめ」と「先生との関係」・・・学校や教育委員会が回答する形で行った調査(児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査)では不登校原因ランキングでは14項目中10位以内にも入らない、言わば圏外の項目でした。ここまでギャップが大きいとなると、「いじめ」や「先生との関係」も隠れた要因として本当は注目していく必要があると言えるでしょう。

生徒本人の状況は、全体的に教師⇔親子ギャップが大きい

次に、グラフの中で赤線で囲んだ「本人の状況」に関する項目を見てみます。

「感覚の過敏さ」「ゲーム・スマホへの依存、依存傾向」「あそび、非行」「体調不良の訴え」「不安・抑うつの訴え」「居眠り、朝起きられない、夜眠れない」どの項目も、教師と親子の回答のギャップが大きいです。

特に
不安・抑うつの訴え(教師 19.0%/生徒 76.5%/保護者 78.4%)
居眠り、朝起きられない、夜眠れない(教師 8.3%/生徒 70.3%/保護者 74.7%)

など、不登校の児童生徒によくみられる体調不良についてギャップが大きく見られました。

学校に行きづらくなっている子は、仮病などではなく、本当に心身に不調をきたすことが多いのですが、その状況は当事者でないとなかなかわからないことなのでしょう。

その他の注目ポイント、ほとんど選ばれなかった項目について

グラフでは、もう1つ、「家庭の状況」についてを黄色い線で囲みました。ただ、ここは、「親子の関わり方」という項目を除くと、教師・生徒・保護者からあまり選ばれていないので分析は避けたいと思います。

代わりに、「教師がほとんど選ばなかった項目」「児童生徒がほとんど選ばなかった項目」「保護者がほとんど選ばなかった項目」に少しだけ触れたいと思います。

教師がほとんど選ばなかった項目~ギフテッド?~

教師がほとんど選ばなかった項目が1つありました。
授業が簡単すぎた(教師 0%/生徒 7.2%/保護者 7.3%)

授業が簡単すぎると感じる生徒にとって、学校の授業が行われている時間は、見たことのある動画を超スロー再生で見ているような感じがするのでょうか。想像ですが。そうだとするととても苦痛でしょうね・・・。
いわゆる「浮きこぼれ」です。塾で先取り学習をしているとか、ギフテッドの子どもであるとか要因は色々でしょう。
先生に気づかれていないということは、あからさまに退屈そうにしたりはしておらず、一生懸命姿勢を正して、良い態度で授業を受けていたのかな?などと思い、気の毒に感じました。

親子がほとんど選ばなかった項目~家庭内不和~

親子がほとんど選ばなかった項目もあります。
家庭内の不和(教師 5.2%/生徒 0%/保護者 0%)
学校・家庭以外でのトラブル(教師 2.1%/生徒 0%/保護者 0%)

当の親子が不登校のきっかけとして選んでいないので、これは教師の見立て違いということになるのでしょう。もしくは別の項目で「親子の関わり方」というものがあるのでその項目と回答が分散してしまったのかも知れません。

ここから先は私の想像です。
私自身、学習塾で勤務していたころ、生徒の退塾理由について「指導上の不満」ではなく「転居」とか「経済的理由」など、家庭側の理由を挙げられると少しホッとしてしまうような事がありました。自分のせいだと思いたくない・・・人間の性だと思います。責任感を強く持てば持つほど、その責任を直視するのは大変なエネルギーが必要になりますから。
こうした調査で、先生方の回答が学校で起こる問題を過小評価し、他の部分に原因を求めてしまうということは、十分に起こりえることだと思います。

だからこそ、教師・生徒・保護者の三者間ギャップに注目したこの調査は素晴らしい試みだと感じています。

誰かが悪いと責めるのではなく、冷静に客観的にこの結果が活用されることを望んでいます。

なお、この調査ではもう1つ興味深い分析を行っています。別記事でその分析についても紹介したいと思いますので、よろしければご覧になってください。


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・コクーンアカデミア考案「保護者の8ステップ」

監修者 峰嶋 聡子

コクーンアカデミア代表/株式会社スタディラボ上席執行役員/首都圏大手学習塾にて中学受験算数指導15年/一般財団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントコンサルタント®/不登校の娘を持つ母/学習塾のノウハウと不登校保護者の視点を組合わせたフリースクールを創業

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