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 不登校「じゃない子」との違いって?~”本気の不登校原因調査”から見えたこと②~ 

2025年9月29日

 不登校「じゃない子」との違いって?~”本気の不登校原因調査”から見えたこと②~ 

不登校原因について、どんな調査結果があるの?

不登校に関する調査として文科省から毎年発表されている児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)は、詳細な調査が行われており、信頼度の高い調査です。しかし、学校や教育委員会が回答しているため、不登校の実態をつかむには限界がある点を過去の記事で紹介してきました。

 【過去記事】はこちら
 2025年発表 不登校児童生徒数最新数値から見えたもの③ ~不登校原因は変わった??~ 

そこで、学校や教育委員会の回答と生徒・保護者の回答を比較する形で分析された「不登校の要因分析に関する調査研究(令和6年3月発表)」という調査を今回はとりあげます。

この調査のポイントは2つです。
・先生(または教育委員会)の回答と生徒・保護者の回答を比較する(関連記事
・不登校の生徒と、不登校ではない生徒の回答を比較する

調査対象数は、全国規模で行われる「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)」と比べると小規模ですが、内容はかなり充実しています。

不登校児童生徒と、「じゃない子」を比べてみた結果は?

こんなに違う、不登校児童生徒とそれ以外の生徒の回答

不登校のきっかけになりそうな23項目について「つらい」と感じたかどうかを聞く質問で、「不登校の児童生徒」と「不登校ではない児童生徒」の間には17項目も明らかな違い(難しい言葉で言うと「統計上有意な差」)がありました。


不登校ではない児童生徒(15,191名)「学校や家で次のような時につらいと感じたか」
不登校の児童生徒(239名)「学校に行きづらいと感じた時、学校や家で次のような時につらいと感じたか」に対する回答の比較

【表の見方】
 色が濃いほど数値が高い、オッズ比が1を超えて高いほど関連性がある(詳細後述)

調査結果の見方(例:「いじめ被害」でつらいと感じたか?)

表の一番上の項目「いじめ被害」を例に、表の見方を紹介しましょう。不登校ではない児童生徒の15%が前の学年の1年間で「いじめ被害」でつらいと感じたことがあると回答しています。それに対して、不登校の児童生徒は26.2%が「いじめ被害」でつらいと感じたことがあると回答しているということになります。明確に差がありますね。
この差が偶然によるものなのか、それとも何かしらの関連があるものなのかを評価するための数値として「オッズ比」があります。オッズ比は1を超えると関連があるとされ、数字が大きくなるほどその関連性は高いという見方をします。

この「いじめ被害」を例に考えると、いじめ被害のオッズ比は2.0なので、いじめ被害と不登校の間には関連性があるということになります。

表では、数字が大きいほど濃い色になるよう着色しています。また、オッズ比が3以上の項目は赤い枠線で囲んでみました。赤い枠線で囲まれている項目は「不登校との関連性が特に高い」と考えられます。

不登校児童生徒は「仲の良い友達がいない」「先生と合わなかった」ことがつらい

赤い枠で囲んだ項目を上から順にみてみましょう。「仲の良い友達がいない」「先生と合わなかった」がオッズ比3を超えています。友達と先生・・・学校の人間関係のほぼすべてです。
特に「先生との関係」については、不登校児童生徒の35.9%が選択していますが、先生を対象に行った調査では、この項目を選択した割合は3.5%しかいなかったことを考えると、周囲からも気づかれていない不登校要因なのだということがわかります。

また、「仲の良い友達がいない」こともよくあることだと思います。
私は長年、学習塾で数多くの小中学生の子ども達と接してその様子を見てきましたが、「自分から友だちを作る力」にはかなりの個人差があります。むしろ苦手な子の方が多いかも知れません。こういう子には大人の手助けが必要ですが、業務量が多く、生徒も大勢いる学校ではなかなか難しいことでしょう・・・。

不登校児童生徒は「宿題ができない」とつらい

「宿題ができない」という項目も不登校児童生徒とその他生徒の差が大きい項目です。宿題ができない理由は、難しくてできないのか、時間がなくてできないのか、習慣化していないのかそこまではこの調査ではわかりませんが、不登校児童生徒の半分がつらいと言っているのですから、結構な問題です。

想像するに、宿題ができないことのつらさというのは、宿題ができないまま学校に行くことの後ろめたさ、先生に申し出る(or聞かれる)までの緊張、申し出た後にどのような叱責を受けるだろうかという恐怖など、宿題にまつわるあれこれの心理的な負担感を指しているのだろうと思います。

我々大人も時々、仕事や日常生活で期限までに出さなくてはならない提出物などありますが、ここまでの緊張感があるでしょうか?忘れたら公衆の面前で叱責され、申し出ることに恐怖を感じるほどの。しかもそれが「時々」ではなく「毎日」です。
仕事でも、お客様に関わるものならば緊張感を持って期限を守るのは当然として、それ以外の事であまり厳しすぎる会社は今なら「ブラック」と言われることでしょう。

学校の日々は社会に出るための練習だと思っていましたが、こうして考えると練習にしてはなかなか過酷なのかも知れません・・・。

不登校児童生徒は「学校の決まりのこと(制服・給食・行事)」がつらい

表の真ん中あたりに「学校の決まりのこと(制服・給食・行事等)」「入学、進級、転校など」という項目も不登校児童生徒とその他生徒の差が大きい項目として囲んでいます。入学などの大きな環境の変化が及ぼす影響が大きいのはわかりますが、「制服・給食・行事」は、ピンとこない方もいるのではないかと想像します。

制服を着る、給食を食べる、音楽発表会や運動会などの行事がある・・・これらは学校生活の「日常」です。制服はともかくとして、給食や行事はむしろ学校生活の楽しみな時間になっている子どもも多いと思います。

これらが「つらい」とは一体どのような事でしょう?

私自身は小食&運動音痴だったので「つらい」気持ちがわかる気がします。

小食&運動音痴の子どもにとって、”完食を求められる給食”や”鈍い動きを全校生徒と保護者の前でさらされる運動会”、”永遠に鬼をやらされる休み時間の鬼ごっこ”などなど、多くの生徒にとって楽しいはずの日常は「試練」なのです(涙)

私の場合は「楽しくないけどまあ、こんなもんだろう」でやり過ごした学校生活でしたが、今、不登校になっている子どもたちは、心が、身体が、何かを感じてしまったのかもしれません。

不登校児童生徒は「からだの不調」「落ち込み」「昼夜逆転」がつらい

さて、赤枠で囲んだ箇所の最後の部分です。「からだの不調」「気持ちの落ち込み、いらいら」「朝起きられない、夜眠れない」どの項目も不登校児童生徒の7割程度が選んでいる項目で、不登校ではない児童生徒との差を表すオッズ比も高いです。

これは個人的な感想ですが、学校に行くための十分な気力・体力がなくなっている状態ということで、不登校の「要因・原因」というよりは、「症状」という言葉の方があてはまるような気がしています。

しかし、一般にはこの部分が「症状」ではなく「原因」とされているため、「不登校の原因は無気力」という言葉で報じられたこともありました。本人や家庭の心がけの問題という印象を与える表現でした。

まとめ~不登校児童生徒が感じているつらさから見えること~

今回の調査結果を振り返ると、不登校の要因は単一ではなく、学校生活のあらゆる場面に潜んでいることがわかります。

人間関係の悩みは「周囲が気づかない」ところで深刻化

「先生との相性」は生徒にとって大きな負担ですが、先生側がそれを自覚できているケースはごくわずかです。

「宿題」や「校則」が日常的なプレッシャーに

多くの児童生徒にとっては苦にならない宿題や給食、行事も、不登校の子どもたちにとっては毎日続く「過酷な試練」となっています。

心身の不調は「原因」ではなく「結果」

朝起きられない、気力が湧かないといった状態は、蓄積したストレスが限界を超えた「症状」として現れている可能性があります。

不登校ではない生徒との比較から見えてきたのは、不登校の子が決して「特別」なのではなく、誰もが感じうる学校生活のしんどさを、より敏感に、切実に受け止めているという実態です。

「本人のやる気」という言葉で片付けるのではなく、子どもたちが日々どのような重圧と戦っているのか。その背景に想像力を働かせることが、不登校を理解する第一歩になるのではないでしょうか。


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監修者 峰嶋 聡子

コクーンアカデミア代表/株式会社スタディラボ上席執行役員/首都圏大手学習塾にて中学受験算数指導15年/一般財団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントコンサルタント®/不登校の娘を持つ母/学習塾のノウハウと不登校保護者の視点を組合わせたフリースクールを創業

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