2025年11月20日
【解説】 2025年発表 不登校児童生徒数最新数値から見えたもの③ ~不登校原因は変わった??~

「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)」の最新結果を分析する全3回のシリーズの3回目です。今回は不登校の原因調査と見なされている「不登校児童生徒について把握した事実」というデータについて意外に知られていない事実も交えてご紹介します。
2025年発表、不登校の原因ランキングは?
不登校に関する最も規模が大きい調査は「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)」です。この調査項目の1つとして「不登校児童生徒について把握した事実」というものがあります。報道等で紹介される「不登校の原因第1位は〇〇」などという内容は、一般にこの調査結果が使われています。
2024年発表のランキングをおさらい~不登校の原因は「無気力・不安」~
2025年10月末発表の調査結果を見る前に、2024年10月末に公表された調査結果を紹介します。このような結果になっていました。
1位 学校生活に対してやる気が出ない 32.2%
2位 不安・抑うつ 23.1%
3位 生活リズム不調 23.0%
4位 学業不振・宿題未提出 15.2%
5位 いじめ以外の友人関係 13.3%
ランキング圏外 教職員との関係 3.0%
ランキング圏外 いじめの被害 1.3%
発表当時、1位の「やる気が出ない」と2位の「不安」という言葉をまとめて、”不登校の原因は「無気力・不安」”と報道されていました。この「無気力・不安」という言葉からあまり良くない印象を受けた層もいたと思われ、ニュース記事のコメント欄には「褒める育児の悪影響」「社会に出たらやっていけないから、我慢も教えていかないといけない」といった意見が散見されました。
確かに無気力な社員が入ってきたら困りますよね。それは私も全く同感です。(なお、不登校児童生徒=無気力社員予備軍ではないと思っているのですが、その話はまた別の機会に・・・)
不登校の原因が「いじめ」や「教師の暴言」などであれば、同情もされたのでしょうが、「無気力・不安」では、本人や親に問題があると思われてしまい、なかなか理解されにくい調査結果だなという感想を持ちました。
2025年発表不登校原因1位は「やる気が出ない」2位は「生活リズム不調」
さて、2024年発表の結果を踏まえて、2025年の調査結果はどうだったのでしょうか?回答の多い順に並べると以下のようになります。
1位 学校生活に対してやる気が出ない 30.1%(微減)
2位 生活リズム不調 25.0%(微増、順位アップ↑)
3位 不安・抑うつ 24.3%(微増、順位ダウン↓)
4位 学業不振・宿題未提出 15.6%(ほぼ横ばい)
5位 いじめ以外の友人関係 13.2%(ほぼ横ばい)
ランキング圏外 教職員との関係 3.1%(ほぼ横ばい)
ランキング圏外 いじめの被害 1.4%(ほぼ横ばい)
大きな変動はありませんが、2位と3位が入れ替わり「生活リズム不調」が「不安・抑うつ」を僅かに上回りました。2024年は「無気力・不安」と紹介された不登校原因ですが、2025年発表をまとめると「無気力・不規則な生活」とでもなるのでしょうか・・・。どちらにしても、いかにも「親が悪い」「子どもが悪い」「甘やかし」と言われそうな調査結果ですね。
参考に、調査された全項目について、2024年発表の令和5年度調査と、2025年発表の令和6年度調査の結果の比較一覧を作成してみましたので、掲載しておきます。

参照データ:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)
2025年発表の不登校の原因ランキング、どう捉えるか?
「原因がわかれば対応策がわかるはず」「他の子はどんな原因で不登校になるのだろう」・・・不登校の子を持つ保護者はこんな思いを抱えながらこの調査結果を見ています。しかし、そこで「やる気」「不規則な生活」「不安」などの捉えどころの無い結果を見ると、「何の参考にもならなかったな・・・」という気持ちになりますね。この結果をどう解釈するか?参考になりそうな情報をいくつか紹介します。
不登校原因を回答しているのは本人や保護者ではない
調査結果を見る際の前提として知っておくと良いことがあります。
この調査、意外に知られていないのですが、生徒や保護者本人が回答しているのではなく、「学校や教育委員会が」回答しています。
そのため、本当は全ての項目に「〇〇について相談があった」という言葉がついています。
例えば、「学校生活に対してのやる気が出ない」という項目は、「学校生活についてやる気が出ないという相談があった」といった具合です。不登校の子を持つ保護者は本当に学校に「やる気が出ないんです。どうしましょう?」なんて相談したのでしょうかね・・・??

もしかしたら子どもが言いたがらない、上手く言語化できないなどの理由で明確な理由がわからないものも「やる気が出ない」という項目にまとめられてしまうかもしれませんね・・・。
また、学校の先生の耳には「いじめ」「友達がいない」「教職員との関係」などの理由は子どもや親からも伝えにくく、先生が把握できていない場合もあるでしょう。
こうした調査方法の背景を知ると、親としては、「やる気が出ない」だけでなく、「いじめ・友達や職員との関係」などの具体に踏み込んだ項目も※選択されていると、むしろ、よく把握してもらっているという安心感を感じます。(※回答は「複数選択」ができます)
「教職員への反抗・反発」が不登校原因だとする調査結果もある
ちなみに、この調査では「教師との関係」に問題がある生徒が3.1%と出ていますが、別の調査では35.9%の生徒が不登校のきっかけとして「教職員への反抗・反発」を選んでいます。別のコラム「先生は不登校の原因を知っているの?~本気の調査から見えたこと①~」で紹介していますが他にもいくつかズレが出ています。
不登校に関する最も規模の大きい調査として信頼度の高い「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)」ではありますが、この調査でわかった事をそのまま「これが原因だ」と報道したり、受け止めたりして良いかどうかはもう少し慎重にとらえる必要があるのではないでしょうか。
不登校の原因は「無気力」という言葉に傷ついている人たちへ
さて、ここまで少し丁寧にこの調査結果が必ずしも不登校当事者の声を正確に反映しているものでは無いということをお伝えしてきました。
つまり・・・、この調査結果を目にして「不登校は甘えだ」「社会に出られない」などと批判するのは的外れですし、また、その的外れな声に反応して「やはり、甘えなのだろうか・・・」と傷つく必要は無いということです。
それでも、頭でわかっていても傷つくことだってあると思います。でも、ノーガードで傷つくよりも「頭では的外れな批判だとわかっている」だけでも、心が守られるのではないでしょうか。正確な知識は心を守るための盾になるはずです。

ところで「え?じゃあ結局のところ原因は何なの?」ということになると思いますが、この原因探しは、不登校当事者の親子にはあまり意味はありません。当事者がここから元気になっていくためには原因探しはあまりメリットが無いからです。
ただし、行政や教育従事者には今後の施策に生かすためにも原因探しは必要だと思います。そもそも、そのための調査だと思いますので・・・。
不登校の原因は、生徒本人も上手く言葉にできないことが多く、調査することが難しいと思います。それでも、今後の施策が的外れなものとならないようにするためにも、生徒・保護者の声が反映された調査が行われると良いですね。
次回の調査は2026年10月末に発表されます。継続的に調査結果には注目していきたいと思います。
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監修者 峰嶋 聡子
コクーンアカデミア代表/株式会社スタディラボ上席執行役員/首都圏大手学習塾にて中学受験算数指導15年/一般財団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントコンサルタント®/不登校の娘を持つ母/学習塾のノウハウと不登校保護者の視点を組合わせたフリースクールを創業

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