2025年11月12日
【解説】 2025年発表 不登校児童生徒数最新数値から見えたもの② ~「病気」による長期欠席~
毎年行われている不登校に関する調査「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の最新の結果が2025年10月末に文部科学省より発表されました。2024年発表数値を上回り、過去最高の不登校人数でしたが、伸び率が大きくなかったためか、「ひと段落」のような雰囲気が漂っています。前回の記事では、生徒数の減少を考慮し、1000人あたりの不登校人数を紹介しました。今回も独自の視点で、この結果を分析します。できるだけわかりやすくお伝えしたいと思います!
不登校増加に伴い不自然に増え続ける数字に注目
今回ご紹介するのは、文部科学省から発表されている「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果を見て気になったある数字についてです。それは、不登校の増加の陰で、あまり注目されていない「病気」による長期欠席の数です。
参照データ:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)

「病気」による長期欠席者は増加し続けている
2025年10月末に発表された調査結果での小中学生の不登校人数は35.3万人で過去最高を更新しており、不登校の児童生徒数は増え続けています。そして、不登校の増加とともに、実は「病気」による欠席者も増え続けています。不自然なほどに・・・。
グラフで見てみると一目瞭然です。

小学生は令和2年度から令和6年度にかけて1.9万人→6.1万人(約3倍)、中学生は2.4万人→4.8万人(約2倍)ですから、激増といってよい増え方です。
長期欠席をしなくてはならないほどの病気にかかる児童・生徒が数年でこんなに増えるものでしょうか?ちょっと不自然に感じます。この結果を素直に「最近の小中学生の病気は長期化しやすいのかな?」などと受け止める方は少ないと思います。不登校の増加との関連を疑わずにはいられません。
「病気」の増加と「不登校」の増加が関連していると言える理由
先ほど、不登校の増加と病気の増加の関連を「疑わずにはいられない」と表現しましたが、実は、個人的には「確信」に近いレベルで関連していると思っています。その理由は、この調査(児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査)の調査方法と関連しています。
理由1:「不登校」か「病気」か?決めないとならない
年度内の欠席日数が30日以上の児童生徒数を「長期欠席者」として扱っています。長期欠席者の内訳は
・病気
・経済的理由
・不登校
・その他
に分けられています。欠席日数は「指導要録上の欠席」を指します。いわゆる「通知表」「通信簿」などに載っている「欠席」の日数ですね。これが30日以上の場合が「長期欠席者」です。
ところで、病気での欠席日数と不登校での欠席日数など複数の理由の合計日数が30日以上になった場合はどうなるのでしょう?どちらかに決めなくてはなりません。・・・そうです。ここで人による判断が入るため、曖昧さが生まれます。
理由2:長期欠席者が「病気」かどうかを判断するのは医師ではない
長期欠席理由を「病気」だと決めるのは誰?
小中学校の「長期欠席者」の調査は郵送やオンラインで、下記の対象に行われます。
国公私立小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校(前期課程)、都道府県教育委員会、市区町村教育委員会
つまり、回答者である学校や教育委員会が「病気」か「不登校」か迷うケースは、どちらかに振り分けて報告しているわけですが、その判断基準は自治体によって細かく定められている場合もあれば、特に指定のない場合もあるようです。
結果として、曖昧なケースを「不登校」に計上した島根県と「病気」に計上した岡山県で調査結果に大きな差が出たという報道もありました。(山陰中央新報社 2025年11月29日)
参照:不登校の判断、自治体でばらばら 文部科学省の定義が曖昧 島根9割で岡山5割
「病気」の定義はどうなっている?
さて、ここで素朴な疑問が生まれませんか?「『病気』かどうかなんて、医師の診断で決まるんじゃないの?」と・・・。私もそう思い、調査の注釈を細かくチェックしてみました。すると、こんな記載がありました。
”「病気」には本人の心身の故障等(けがを含む。)により入院、通院、自宅療養等のため長期欠席した者を計上。(自宅療養とは、医療機関の指示がある場合のほか、自宅療養を行うことが適切であると児童生徒本人の周囲の者が判断する場合も含む。)”
では、こんな場合はどうでしょう?
毎日頭痛を訴えて学校に行けない子どもがいたとします。病院で調べましたが原因はわかりませんでした。とりあえず、しばらく休ませた方がいい、と親が判断して休ませることにしました。典型的な「不登校」の事例ですが・・・これは「不登校」でしょうか?「病気」でしょうか?
「自宅療養が必要だと児童生徒本人の周囲の者(=親)が判断した」ということで「病気」の定義にも当てはまっていますね。
よって、答えは「不登校」「病気」どちらも正解!です。

「病気」による長期欠席も加えた分析結果
長期欠席者の「病気」と「不登校」を合計した場合は?
さて、長期欠席者の中で「不登校」と「病気」の境界線が曖昧であることが見えてきました。そうなると、「病気」による欠席者の増加も「不登校」に加えて分析していかないと正確な状況がわからないのではないか?と思えてきます。そこで長期欠席理由の「不登校」と「病気」を合計してグラフを作成してみました。
改めてグラフにしてみると、視覚的に見ても、「病気」(緑色と黄色の部分)の増え方・・・大きいです。

「病気」の半数を「不登校」と見なしたら?
ここで仮の計算をしてみます。およそ11万人いる小中学生の「病気」による長期欠席者のうち半数が「病気」ではなく「不登校」に振り分けられていたとしたらどうなるでしょうか。
前回の記事で、小学生の不登校人数は44人に1人、中学生は15人に1人とお伝えしました。乱暴な計算ですが、「病気」扱いになっている児童・生徒のうち、本当は「不登校」に計上してもよい生徒が半分いたとすると・・・小学生の不登校児童数は36人に1人、中学生は13人に1人の割合にまで高まります。
また、2025年発表の小中学生の不登校人数は合計35.3万人ではなく、40.9万人になります。「不登校40万人」なんていうニュースが出ていた可能性もあったのかも・・・しれません。
~余談~長期欠席理由の「その他」という項目について
最後に余談ですが、2025年に発表された調査では長期欠席者を「病気」「経済的理由」「不登校」「その他」に振り分けていますが、「経済的理由」はほとんど選ばれていません。(全国で28人)一方で、「その他」は4万人以上います。
「その他」に入れるべきものの具体例として以下のような注釈がありました。
ア 保護者の教育に対する考え方、登校についての無理解、家族の介護、家事手伝いなどの家庭の事情から長期欠席している者
イ 外国での長期滞在、国内・外への旅行のため、長期欠席している者
ウ 連絡先が不明なまま長期欠席している者
エ 感染症の回避(ただし、「非常変災等児童生徒又は保護者の責任に帰すことができない事由で欠席した場合などで、校長が出席しなくてもよいと認めた日」として、指導要録上「出席停止・忌引き等の日数」の欄に記入し、欠席とはしないとされた者を除く。)
参照:令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 68ページ欄外より
「ア」の「登校についての無理解」に、「不登校」が含まれている可能性がありますね。
不登校の人数は発表されている数よりもかなり多いのではないか?と思える材料がいくつも出てきてしまいました。
筆者はフリースクール、通信制高校を運営する立場から、今後もできるだけ正確な状況を把握していきたいと思っています。そのため、今回は集計には表れていない不登校の人数に注目してみました。
次の記事では、この調査結果で発表された「不登校の原因」について、ご紹介します。
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・この記事の続き【速報】 2025年発表 不登校児童生徒数最新数値から見えたもの③ ~不登校原因は変わった??~
・コクーンアカデミア考案「保護者の8ステップ」
監修者 峰嶋 聡子
コクーンアカデミア代表/株式会社スタディラボ上席執行役員/首都圏大手学習塾にて中学受験算数指導15年/一般財団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントコンサルタント®/不登校の娘を持つ母/学習塾のノウハウと不登校保護者の視点を組合わせたフリースクールを創業

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